夜光列車/木屋 亞万
 
した
その日は雨でした、いつものように兄は彼を迎えに来る予定でした
彼の兄は片手に傘を差しながら、坂道を下っていました
坂道を八割ほど走った頃に、坂のすぐ下にある踏切が閉まりました
兄は慌てて右ブレーキを強く握りましたが、濡れたブレーキは悲鳴をあげるだけ
小さな新幹線はこの列車に衝突してしまいました」

「男の子の父は、彼に泣くなと言いました
男の子は泣きませんでした、すると視界が少しずつ暗くなってきて
どうしてか息をするのが苦しくなってきました
それでも彼は泣かず、笑うこともできず
静かな暗闇の中、彼の兄と電車を心に閉じ込めたのです
男の子は、今はもう男になってしまって
彼の兄は、おぼろげな後姿、写真の中だけの存在になりました
それでも列車は昔のまま、彼の悲しみの雪原で
雪に包まれて、凍えながら光り続けているのです
そのため、この列車は現在も運転を見合わせております」
車掌はそう言って深々と頭を下げた

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