夜光列車/木屋 亞万
北行列車は、かれこれ数年間は立ち往生している
車掌はいつも困り顔で客室に説明をしに来る
私はそれを聞かずに窓の外を見ている
雪が窓に張り付くとふわりとした光を持つ
「蛍の光、窓の雪」と歌ってみたりする
次から次へと雪がひらひら窓を惑わせて、
ふわりふわりと窓が光ながら痙攣する
蛍雪の功という言葉がよぎり、
曇る窓の目蓋をこすると、雪が静かに死んでいく
泣き崩れるように溶けてゆく、そのか弱さは嘘だと思う
雪が生きていないのなら、蛍が生きているなんて嘘だと思う、
雪が生きているなら、蛍もきっと生きているのだろう、同じ月光の魂を持って
車掌は説明する
「ある男は昔、男の子で
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