芽/アンテ
 

息をとめても
目を閉じても
とまらない
ああ
そうか
わたしの心臓がまだ動いている
血液が
神経細胞が
眼球が
ぱらぱら
ぱら
しずくがなにかに弾ける音
へんだ
水道はしっかり止めたはずなのに
ち・よ・こ・れ・い・と
垣根のむこうから
かすかな声
床のフローリングが
ひんやりして気持ちよくて
たっぷり太陽の光があたる場所で
冬を越して春がくれば
きっと芽が出るでしょう
そうか
あの柿の木の芽が
成長している音にちがいない
なんとか身を起こす
暗がりのなか
どちらへ進めばいいか迷っていると
なにもなかった場所に
かすかな光がともる
ひと
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