芽/アンテ
ひとつ
またひとつ
しだいに増えて
繋がりあって複雑な輪郭をえがく
くすくす
笑い声がする
人の背丈くらいある
鍵をかけたのに
だれも入れるはずがないのに
後ずさるうち
背中が窓ガラスに行き着く
とっさに窓をあけて
雨戸をあけて
外へ転がり出ると
生あたたかい土の感触が
風の流れが
太陽の陽射しが
いつもの庭に満ちている
土のうえに仰向けに寝転がったまま
空を流れる雲を見ていると
どちらが動いているのか
判らなくなる
くすくす
笑い声がする
早く芽が出るといいね
垣根の葉が揺れる
そうね
うなずく
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