名前のない肖像/士狼(銀)
 
名前はやはり記号なのでしょう
存在を証明する 一番純粋な記号

大人に近づくにつれて
何となく 自分の名前さえ空ろになって
記号なのだと 証明なのだと、
眠る前に言い聞かすのです
そうして 懐かしい夢を見るのです

庭先に桜草が咲いているのです
飛行機雲を追いかけ 
空ばかりを仰いでいたこの足首を
ふと 掠め、
今日和と それはそれは可愛らしく
風に揺られていたのです

そうして囲まれた足元には
まるで空を写し取ったような
透き通った蒼色の 小さな白い花弁
指先が熱かったのでしょうか
そっと撫ぜると 堕ちてしまった蒼

「桜草の傍にねぇ、蒼くて小さい花が
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