名前のない肖像/士狼(銀)
花が、
あぁでも、名前が分からないの
「さっき図鑑とにらめっこしてたわね
「あぁでも、名前が分からないの
分からないのよ、母さま
ものに囚われない生き方が出来たなら
きっと記号なんて必要ないのでしょう
硝子 も 花 も 大好きなあの人 も
名付けることで、支配下におきたいなんて
なんて醜いエゴの表れでしょう
仕方が無いのです
許してください
囚われてしまっているのです
名前がなければ 三角定規もコンパスも
この掌も 分からなくなりそうで
何となく 自分の名前さえ空ろになって
眠る前に尋ねてみるのです
あなたはどうして此処にいるの、と
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