連作「歌う川」より その1/岡部淳太郎
そして夜
祈る人はいつものように川べりで 休む
どこかの淋しい家では
心ある人が 昼間はそれとは気づかなかったのに
夜になってやっと
この大地も地球という名のもうひとつの星
であることを知る
祈る人は そんな人の存在も知らず
また無数の人々の
宇宙塵のような思いも
まったく知らずに眠りこけている
鳥さえも黙りこむ
夜である
やがて
石の枕の硬さに
眠りは中途でさえぎられる
祈る人は
現に引き戻された夢見がちの眼で
川を見る
空を見る
まだ 真夜中
当然のことながら
頭上にはいくつもの星がまたたいていて
誰かの
隕石が成層圏で燃えつきて果てて
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