連作「歌う川」より その1/岡部淳太郎
 


だから
彼は歌う
かたわらで歌う川と波長を合わせて
彼は歌う
彼の喉から漏れるのは
まったく新しい
それでいてどこまでも古い
旋律である
彼は歌う
歌うことは
宇宙に寄り添うことだから



星の川・川の星

いまや
川は山を降りて 大胆な
平地を
悠然と流れ始めている
当然のことながら
そこには歌がある
せせらぎという名の
誰も歌うことの出来ない
歌がある
当然のことながら
祈る人が 川に沿って歩いている
隕石はまだ来ない
だが彼は 川を見下ろすと同時に
空をも見上げている

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