連作「歌う川」より その1/岡部淳太郎
して美しくはないが
他の誰でもない
自分の
声だった
祈るには
十分な大きさの
声である
歌うには
程良く音程の取れた
声である
世紀は
もうすぐ終るが
またすぐに次の
新しい世紀が始まる
彼は
新しい人
祈る人である
ひとりでも歌おう
この川に沿って
流れつづけよう
そう彼は
思った
川が笑う
一歩毎の積み重ねが
永遠への
始まりである
歌
歌とは
何であるか
ひとつの秩序立った旋律を持つ
音の総体であろうか
歌とは
何であるか
ひとつの あるいはふたつみっつの
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