連作「歌う川」より その2/岡部淳太郎
がかかっていた
祈る人は
目醒めのぼんやりの中で
声を聴いた
川の歌とは明らかに違っていながら
どこか川の歌に似た響きを持つ
声だった
何を云っているのか
はっきりとは聴き取れなかったが
確かに
声が聴こえる
祈る人の耳にその声は
自分を呼んでいるように聴こえた
そう
呼んでいる
どこか遠くで
それは宇宙から真っすぐに降りて来る
隕石の声 だったが
祈る人は
そんなことを知る由もなく
ただ漠然と
その声に心をひかれた
また
もうひとつの夜
祈る人が いつものように眠ろうとすると
またしても
声が聴こえた
やっぱり呼んでいる
どこか遠くで自
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