姫と王子/蒸発王
 

と微笑むので
新しい紅茶を入れた


飲みながら
彼が手の包帯を外してくれと言うので
言われるまま外す
現れる白い掌は
見てくれこそ普通だけど
半時もすれば溶けてしまうだろう

手を 握った


(心臓の音がするね)

彼はやはり笑う


もたれかかって
少し伸びた髪が頬にふれた
懐かしそうに
とても懐かしそうに
むかし話を
1つ1つ
祈りの言葉のように呟く

私は笑っていた


彼は紅茶を飲み終えて
息だけで
ありがとうと囁き

やがてゆっくりと

しな垂れた


其の瞬間は

ただ嬉しくて         {
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