銃とてっぽうと/キセル
 
おばあちゃんが倒れた
おじいちゃんが死んだ年だった
一年に二人も愛しいヒトを亡くしたくなかった
おばあちゃんは助かった
お見舞いに行った
見たこともない親戚が沢山いた
病院の匂いは嫌いだ
おばあちゃんがいたのは死にかけの年寄りが
うんともすんとも言わずに寝ている部屋だった
おばあちゃんもうんともすんとも言っていなかったが
近づいて話しかけると、総入れ歯が全部外れたみたいに
呪文を唱えながら笑っていた
ふぁりぎゃひょうふぇ

またお見舞いに行った
おばあちゃんの娘家族がいた
豆腐も潰せない握力だったのが
ペットボトルくらいは開けられそうな握力になっていた
病室の前
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