*ナディの新しい朝*/知風
だうちの
三人ともが土の下
ひとりは肺病で顔を赤くして
ひとりは知らぬ間に顔を蒼くして
ひとりはあの時の狂犬に食われ
どこが顔かも判らぬ様で死んだ
繰返されるナディの毎日
掃除 洗濯 飯炊きで
それはこの通りの女たちの
まったく普通の不幸と幸福
大家族の女王は夫の母
文句と嫌味が昼の日課
夫も甥も親戚も男は逃げて
ナディはひとり女王のご給仕
ナディは耳を澄ます
どことも知らぬ遠い世界へ
そしてとうとう聞いたのだ
確かに響く かすかなラッパ
はるか南より風に逆らい
待ち望んだ音が
ナディは裸足で飛び出
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