ひとかけらのお話たち/夕凪ここあ
 
ばんで
 歩き出す、また


 ママもパパも
 夜にならないと帰らない
 少女の赤く腫れた
 霜焼けの小さな手
 家の前に佇む雪うさぎ
 いびつに不恰好に
 それでも
 ママとパパの帰りを
 じっと待ってる
 少女の涙で少し、溶けた


 今夜は
 どこの家でも
 あたたかいシチューを作って
 橙色の明かりを焚いて
 しあわせだね、なんて語らう
 窓の外で子猫が鳴いてる
 それを見て
 かわいいね、なんて笑う
 窓の外で子猫が鳴いてる


 冬のない国から来た少女
 日に焼けた手を空に伸ばす
 ぼたん雪が
 一秒より遅い速さで
 触れて
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