ひとかけらのお話たち/夕凪ここあ
れて溶ける
こんなに凍えそうなのに
不思議ね
綿毛より
やさしい音色で
朝寒くて
いつもはベッドで丸くなるのに
朝寒くても
外が一面の雪ならば
引き出しから
手袋出してうずうずしてる
早起きしすぎて
朝ご飯を待つ、少年
早く
一面の雪に
ばふっとしたい
森の奥
花の咲かない季節
誰も踏み込まない
雪に点々と続く足跡
何か動物の、
木も草も冬篭りしてる
ほんの少しの間だけ
彩られる雪の花畑
誰の目にも残らないまま
また雪に埋もれて
改札を抜けた
時計台
の下で待つ少女
もうすぐ
今日が終わるころ
足元に雪
通り過ぎる電車の音
続いてく線路
夜に沈んでく体
遠い町
あなたが
来ない今日
も、雪
眠る間に、やさしい色と形と決して溶けない透明度で
この町にも今夜 雪ふるる
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