呉服屋の座敷わらし/蒸発王
らし
それから
何年も経った
商店街の近くにはスーパーができて
夜中まで騒いでいた魚屋も
8時には店じまいをするようになった
小学生は大学生になって
働いている同級生も
母親になっている同級生もできて
呉服屋は
もう無くなった
季節は冬で
七夕なんかずっと先の話しで
なのに
今夜
私は座敷わらしを思い出した
会いに行こう
そう思って出かけた
夜更け
街燈の光が
しろくしろく
あの呉服屋を照らしていた
シャッターには閉店のお知らせが
黄色くなって貼りついていたけど
白いシャッタ
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