呉服屋の座敷わらし/蒸発王
 
ッターが向かいの街燈に
白く
白く
照らされていて


あの頃のスクリーンみたいだ


思った
その時



影姿のアイツが映った
私は大きくなったのに
アイツの背丈は昔のままで
あいかわらず面白い格好をして
私を笑わせると


暫く静かになって


ゆっくりと



手をふった



見えないサヨナラが
粒子になって届く様に
じんわりと
私は理解した

だんだんと
薄くなっていく影

私も一生懸命

手を
ふった


アイツが見えなくなるまで



ずっと


手をふった




過ぎていっても
決して消える事の無い
大切な何かに


ずっと
手をふり続けた





『呉服屋の座敷わらし』
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