呉服屋の座敷わらし/蒸発王
 
のスクリーンに
御伽草子の映画を回した
6畳ほどの客席に
子供が20人くらいすし詰めになって
スクリーンに夢中になった

この時

映写機とスクリーンの間に
人が居ないのに
スクリーンに影が映ることがあった
影姿しか見えないソイツは
皆がせっかく見ているのに
変なポ―ズで映画の邪魔をして
ヤジを飛ばされたりしたけど
皆と一緒に
物語りに泣いたり
笑ったり
喜んだりして
皆が帰る時には
影姿だけで手をふった



いつしか
姿の見えない『もう1人』は
座敷わらしなんだ
と仲間内で言われるようになった

七夕にしか会えない
呉服屋の座敷わらし
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