旅の終わりに〜善光寺にて〜(仮)/服部 剛
 
から取り出した
携帯電話の画面で受信したメールを見る君は 

「 ごめんなさい・・・バイト先から呼び出しが・・・ 」 

紫のマフラーを垂らした小さい背中を 
店の出口から見送り 
長野駅へと走るバスの
後部座席に乗った君の黒髪は
遠のいてゆく 

一人店に戻ると 
テーブルの上には 
空のティーカップと
君がこぼした少しのミルク 

腕時計に目をやると6時25分
東京行きの新幹線の発車時刻まで残り一時間

残りの紅茶を飲み終えた僕は立ち上がり 
上着をはおって店を出ると 
夜の善光寺へと、再び歩き始めた 

いくつかの大きい門を抜けて 
真っ直ぐ伸
[次のページ]
戻る   Point(9)