「脳梗塞」/広川 孝治
れた
容態が急変したこともあった
突然現れた見知らぬ男たちが
救急隊員であったことは
救急車に乗せられて初めて判った
わたしが口から泡を吹いて
苦しんでいたので運ばれたのだ
痰が完全に詰まってしまい
呼吸が止まったこともあった
気づいた次男が慌てて吸引し
わたしは命を取り留めた
「お母さん、ごめんね、苦しかったね」
次男が涙を流していた
そのときわたしが涙目になっていたのは
苦しかったからではない
お前に心配かけてしまう
自分が悔しかったせい
それでもわたしは生き続けた
三年の長きにわたり
子供たちの手を煩わせながら
自分では何もできずに
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