「脳梗塞」/広川 孝治
たころ
まさか自分がお前たちから食べさせてもらうようになるだなんて
想像もできなかった
情けなくて
苦しくて
何度死にたいと思ったことか
しかし動かぬこの体は
自ら命を絶つことすら許してくれぬ
なんと情けない
なんと情けない!
わたしは
ただ手のかかる
何の役にも立たない存在になってしまった
台所に立って
子供たちの好きな
ハンバーグを作ることもできず
ミシンに向かって
子供たちの服を作ってやることもできず
ベッドに横たわり
外の音に耳を傾け
訪れる人の姿を目で追うことしか
わたしにはできぬ
そうして三年の月日が流れた
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