「脳梗塞」/広川 孝治
ウシカナイ
わたしの脳は壊れてしまった
左半分が真っ白になった写真を前に
医者は子供たちに説明していた
「もはや治ることはないでしょう
自力で歩くことも
食べることも
寝返りをうつこともできない
話すこともできず
意思を通わせることも不可能
どうされますか」
わたしは聞いていた
わたしには聞こえていた
わたしはわかっていた
わたしにはわかっていたのだ
「わたしを殺して
わたしを殺して!
わたしは子供の世話になってまで
生きていたいと思わない
ベッドに縛り付けられてまで
生きていたいと思わない
オシメヲツケ
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