旅の荷物/渦巻二三五
旅慣れた人の荷物は小さいという。
わたしの鞄はぱんぱんに腫れ上がって重い。
たった一人遅れてやってきた草原で一息つく。
鞄を開くと
女が入っていた。
死んだはずのわたしだった。
やっぱり死んでいた。
どうせわたしは大荷物ですよ。
はやく運んでしまいたい。
苦労して鞄を閉じる
旅を楽しむ気分はうすれていた。
ようやくあと一息というところまで来た
のだろうか。
急いだつもりだったがまだ追いつかない。
いまさら焦ってもしかたがないから
また一休みする
と 足下が崩れ去る。
気がつくと開きかけた鞄の中にいた。
ゆっくりと身じろぎして
外に出る。
あ、死んでる
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