O\ a mok 改/人間
 

苦楽知らずの白痴の女はクラックには極めて暗く
楽々鳴る落雷に咲く金のライラックを摘むべく なるべく先に手を伸ばす銀窓の外には
ハイカラ酸性雨が激しく降り
「リラってラリってられるのかしらん」と白痴の女が言うと
馬鹿な若者は遮光カーテンを閉め切る

ボーキ斉藤氏の言う通り
冬を1グラムずつ炙ると
ケルト組み紐渦巻き模様の雪が降る
馬鹿な若者と白痴の女は
せめて鼻だけは優等生となり
直径25cmのかなしみに向かい合い
蛍の缶詰を箸で掻き混ぜ
豪雪に埋もれて芽の生えない豆を慎ましく慈しむ

落雷は鳴り止まず
ハイカラ酸性雨は激しく


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