狩人/士狼(銀)
その昔
まだ名前も与えられなかった頃
僕に
綺麗なモノの綺麗さは届かなかった
1
深い山の奥底で
熊の子供が眠っていた時
その兄は僕が殺したのだった
子供の寝顔に銃声は似合わなくて
その耳を奪って入れ替えた
子供は鮭に食べられた
我知らず微かな音を拾うその耳から
僕は命を知った
足元で蠢く、虫の存在が恐ろしかった
2
狭い洞の枝から
梟の子供が飛び立った時
その妹は僕が殺したのだった
月光を一身に集める姿が美しくて
その翼を奪って入れ替えた
子供は鼠に食べられた
我知らず夜空を求めて動くその翼で
僕は月に逢った
星の輝きすら消す月光
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