水族館2.0/10010
した。なぜなら、それは王様のおふれで禁止されていたからです。それに、魚たちには、「表情」というものがどういうものか、よくわかりません。魚には「表情」がありません。というのも、魚というものは、全身がひとつの顔のようなものなので、かえって殊更に「表情」というものを持つことはないのです。顔に「表情」が生じるのは、顔が、特定の役割を担うような、体の一器官でしかない生き物の場合だけでしょう。それゆえ、魚たちは、月の裏側がどんな顔をしているのだろうと思ってみても、いまひとつよく想像することができませんでした。
一匹の魚が、隣の魚に言いました。ぼくはそれでも「表情」が欲しい。隣の魚は言いました。そん
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