イメージ・ストリーミング/加藤泰清
 
球のように真ん丸い。私は必死で蟹を追う。息を切らしながら追う。しかし蟹の姿は真ん丸の中に隠れてしまっている。私は動こうともがくが、体が砂の中に埋まっている。首だけが飛び出している。向かってくる波は口の高さを越している。いつまで経っても波が引かない。口が海で覆われている。
とても冷たい。空はどんよりと恐ろしいぐらい濃い灰色で、雪が降っている。大きなボタ雪だ。雪の当たる部分が凍りつく。今は冬だ。十二月だ。海は一瞬で凍りつき、口も鼻も氷で覆われてしまっている。息ができない。冷たい。とても苦しいのに呻くことも、もがくこともできない。私は目の前の氷にシュプールができているの気付く。なにも通っていないはずな
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