イメージ・ストリーミング/加藤泰清
つけ、あちこちに白波を見つける。その時そよ風が吹いているのに初めて気付く。そよ風は磯の香りだ。磯の香りということは、多分さっきも吹いていたのだろう。
私は左下を見やると、先ほどの蟹が歩いているのを見つける。もう十メートルほども離れている。私はまた腹這いになり、匍匐前進で蟹を追っている。しゃぎしゃぎと砂に触れながら、パーカーの隙間から砂が入ってくるのを感じる。細長い虫が入ってくるのを感じる。それをひき潰すのを感じている。蟹との距離が一向に縮まらない。私は必死で蟹を追う。顎で砂を引きずっている。砂が口に入る。とてもしょっぱく、私の歯では噛み砕けない。何グラムか胃の中に送ってしまっている。砂浜は地球の
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