五百円玉/はらだまさる
を手に入れた。
ヒサコはずっとそれを大事そうに
両手に抱え込んでいた。
お兄ちゃん冥利に尽きる一日だった。
しかし、その思いも束の間だった。
家に帰ると、僕等より少し早く帰って来ていたお母さんが
いつもとは違う感じでしゃべりだした。
「お母さんの財布から五百円玉をとったのだぁれ?」
そう言われて僕はすぐに犯人が誰だかわかった。
ヒサコに視線を落すと、さっきまで大事に胸に抱えていた
キラキラのスーパーボールをゆっくりと背中の方に隠した。
もう一度、僕はお母さんの顔を見上げて
お父さんの言葉を思い出していた。
ヒサコを守らなきゃだめだ。
僕は咄嗟に嘘
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