五百円玉/はらだまさる
 
番好きみたいだった。
毎日、店の軒先で太陽に照らされて
キラキラと輝くそれを見て
内気な性格のヒサコが「きれいやね」と言って笑うのが
僕は好きだった。

そんなある日のこと、
家に帰るとヒサコがどこで
誰からもらったのかわからない五百円玉を握り締めていた。
どうしたのか聞くと、おかあさんからもらったと
ヒサコが言うので僕はそれを疑うこともなく
うれしくなって食卓の上の手紙も読まずに家を飛び出す。
ヒサコの手を取って、いつもの道のりを走って。


僕等は真夏の暑い太陽に照らされて
黄色くくすんだ三百円という値札のシールが貼られた
青色のキラキラしたスーパーボールを手
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