五百円玉/はらだまさる
 
蹴り。

右耳の聴こえない妹はいつも僕のそばにいた。
完全に耳が聴こえない訳ではないので
日常生活を送るのにそんなに不自由はなかった。

あるとき、デパートの人込みの中で
迷子になった妹の名前をみんなで呼んでいたときに
数メートル前方で辺りを見回していた妹の反応がおかしいことに
おじいちゃんが気がついた。
それがきっかけで彼女の右耳が聴こえないことが判明した。

僕より三歳年下の妹がちょうど四歳になった春に
お父さんからその話を聞かされた。
「ショウタ、ちゃんと聞けよ。
実はな、ヒサコは右耳が聞こえへんのや。」
「うそ!?なんでなん?」
「お父さんにもわからんけど
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