花壇のわきで/佐野みお
本当はあなたと一緒に
花壇を作りたかったのだ
ともに暮らす家だとか
肩を並べてドライブする車だとか
そういったものはどうでもよくて
ただ花壇を作って花を育てたかったのだ
だから花は好きかと訊いた
あなたは好きだと言った
薔薇が、スイートピーが、
かすみ草が、パンジーが
水仙が、クロッカスが
ぼくもあなたも
花について詳しくはなかった
ぼくはきれいな花を見つけるたび
その名前を覚えようと
図鑑を見る習慣を身に着けた
あなたが夢見るものも
その程度であってほしかった
二人で一坪ほどの土地だけを
望んでいたかった
あなたはいつのまにか
夢を育
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