ピラニア/「Y」
 
た。底の部分が金属質の強い光を放っていて、その色彩は、ピラニアが動くにつれ、ピンクがかったり金色がかったりした。
 僕は目の前で泳いでいるピラニアを、半ば放心しながら眺めていたが、同時に、一昨日にこの魚を見たときには感じていなかった気分も、心の中に感じていた。小さな石ころのような異物が心の中に紛れ込んでいるような、幽かな居心地の悪さがあった。僕はそれが何なのかを心の中で探っていたが、うまく捕まえることができなかった。昔見た怖い夢の一場面を懸命に思い出そうとしているような、嫌な気分だった。
「餌は……」
 隣から不意に話しかけられ、僕は驚いて身体を顫わせた。
「ごめん、驚かせちゃったかな」
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