ピラニア/「Y」
 

 いつの間に来たのか、金髪の店員が僕の右隣に立ち、僕がびっくりした様子を眺めながら苦笑していた。
「いいんです。それより、餌は、なんですか」
 僕が片手で胸を押さえながら店員に訊くと、店員は即座に答えた。
「うん。餌は、最初はメダカ。そのあとは金魚やモエビかな」
 僕は二日前に父が、「大群で牛を襲う」と言っていたのを思い出したが、目の前のピラニアが生きたままのメダカを丸呑みにしている様を思い浮かべ、その生々しさに、思わず声をあげてしまった。
「メダカを食べさせるんですか」
「人工飼料もあるよ。生き餌にこだわる必要はないからね」
 僕の反応に驚いたらしく、店員はすこし慌て気味にそ
[次のページ]
戻る   Point(4)