ピラニア/「Y」
 
を移した。
 水槽のなかのピラニアは、ゆったりと鰭を揺らめかせながら、水の中を漂っていた。
〈二日前と同じだ〉
 心の中で僕はそう呟き、なぜかほっとした。
 水槽の前で中腰になって、ピラニアをじっくりと観察する。
 肉のたっぷり付いた紡錘型の身体は、銀色の混ざった灰褐色の鱗に覆われており、その上を、ラメでも被せたみたいに、無数の白銀の霜が降っている。車のバンパーのような巨きな顎が、ふてぶてしい面構えを象ってはいるけれど、ひしゃげた硬貨みたいな目玉を見ると、あんがい神経質そうにも思えてくる。
 鰓から腹にかけての一帯を染めている朱色が、二日前よりも、その鮮やかさを増しているように見えた。
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