ピラニア/「Y」
ピラニアは、蛍光灯の光の色をメタリック・グレイに映えさせながら、水槽の中をゆっくりと泳いでいる。
僕はひんやりとしたガラスに手をかざしながら、ピラニアに向かって話しかける。
「お前とも、もうお別れだなあ、せいせいするような、寂しいような、なんだか変な気分だよ」
すると目の前の魚は、ゆるやかに尾鰭を動かしながら、水槽のちょうど真ん中あたりで顔をこちらへ向け、僕の言葉に返事をするように口を開く。銀色がかった口腔内の組織と鋭い牙が、僕の目の前で一瞬顔を覗かせる。
ふと我にかえると、僕は水槽の前にしゃがみ込みながら、ひっそりとした奇妙な笑い声を上げている。
熱帯魚店の店員が二人、小型
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