女が家を留守にするとき/渦巻二三五
れぞれの家を空けてきた。
なかには子どもを連れてきた者もいた。
居酒屋に子連れなんて、と私も思う。
しかし、そうしなければ、仲間たちとのほんの数時間の楽しみさえ得ることのできない者もいるのだ。
とても楽しいひとときだった。
皆、屈託無くふざけ、笑った。
宴たけなわの頃、誰かの携帯電話が鳴った。初参加の彼女のものだった。夫からの電話であろう。
「出たくない。帰りたくない」
と彼女は電話の入ったバッグをコートで覆った。
かなりしつこく鳴っていた電話は、一旦鳴り止み、しばらくしてまた鳴った。
しぶしぶ電話を持って席を立った彼女が、ひどく叱られていることはわ
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