女が家を留守にするとき/渦巻二三五
 
はわかっていた。
 もどってきた彼女に声をかけると、
 「もう家には入れない。外で寝ろ、って言われた」
 と言う。
 結婚以来初めて、それもほんの少しの時間なのに、たったそれだけの自由も妻にゆるさない男がいる……。

 会がお開きになって、居酒屋の玄関口で別れるとき、皆笑顔だった。
 件の彼女も。
 帰ったら、皆、妻の顔にもどって、ひとときの留守を詫びなければならない。もしかしたら打たれるかもしれない…人もいる。しばらく姑のいじめに耐えねばならない、人もいる。それはお互い承知している。
 でも、そんなことはおくびにも出さない、笑顔だった。同情を口に出さない。どうにかなるさ、と笑っ
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