怨念マリモ/「Y」
 
的に研究する意向を周囲に表明した直後、博士は研究室で手首を切って自殺した。
 持病の欝が悪化したのが原因だった。

 告別式の後、女生徒は研究室を訪れた。
「大変なことになりましたね」
 女生徒の言葉に、若い女の助手は涙を流した。
「身近な人が亡くなるというのは、実に不思議なものですね」
「……」
「あなたは、感じませんか? わたしたちのすぐ傍で、まだ呼吸をしているような……」
 もちろん、感じますとも、と女生徒は言った。「発作的に切ってしまったのでしょうね。死んだ後に、後悔したのでしょう」
 助手は放心したように、研究室の隅に置かれた物体を見つめていた。それは、円筒形の水槽に
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