怨念マリモ/「Y」
 
けど、怨念が生きながらえるために宿る生物としては、マリモが最適なのですね」
「いえ、断定はできません。我々が思いもよらない生物に、宿っている可能性はあります」
 それからしばらくの間、二人は黙り込んで二つの水槽を眺めていた。
 片方の水槽に『A』と書かれた、そしてもう片方の水槽に『F』と書かれた小さなプレートが貼り付けられている。
「この、AとかFとかは何ですか」
「安達さんと福田さんです」
「……アダチ?」
「ええ。怨念の主を示す記号です。個人名を、便宜を図ってアルファベットに置き換えたものです」
 女生徒に訊かれた博士は、そう答えた。
「そういうことですか」
「それにしても
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