肺 茸/「Y」
 
「それを喰べるかどうかは、もちろん患者の自由ですよ」
 カルテを一瞥して医者は俺に言い、ニヤリと笑った。
 俺もつられてニヤリと笑ったものの、気分的には最悪だった。
 
 俺の肺の中には、キノコが生い茂っている。
 キノコの名前は、「肺茸」だ。

 自覚症状はあった。
 十月末に咳がやたらと出て止まらなくなったとき、俺は単なる風邪だとばかり思い込んでいた。
 喉のあたりにムズ痒さがあったので、会社から帰ってきたら、毎日うがいをするようにした。
 自慢じゃないが、俺は健康に自信があるほうだ。
 学生時代はずっとスポーツをやっていたし、風邪だって、年に一度ひくかひかないかだ。

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