肺 茸/「Y」
 

 だから、今回の咳についても、俺は高を括っていた。
 一週間もすれば自然に収まると信じて疑わなかった。
 だが、咳の激しさは日を追うごとに昂じてきて、おまけに喉ぜんたいを覆っていたムズ痒さが、徐々に下へと降りていった。
「肺が痒いんです」
 二週間後、辛抱できなくなって会社の近くの医者に駆け込んだ俺は、初老の院長に向かってそういった。
「肺が痒い? あんた、面白いこと言うね。軽い感冒だろう。念のためにレントゲン撮っておこうか」
 医者はアクビ交じりの反応を俺に寄越した。
 医者の態度が変わったのは、出来上がったレントゲン写真を見てからだ。
「あ、こりゃウチじゃ駄目だ。感冒じゃな
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