早贄の宴/朽木 裕
 
(はやく耳をふさいで。あれは死人の戯れ唄―。)


寒々しい空は、睨むごと暗さを増して、
空が生きているならば、それは今にも息絶えそうな色をして。



冬の匂い、

スカートの裾、ブラウスの襟から虚無が滲んでくる。




死に損ない、と低く呟いた私の肩に置かれた手は、

いやに

強い力で。




「あの枝を御覧、今年も早贄の季節」




振り返る事がひどく、恐ろしくて

私は枝をぢっと見る。



絶命の螳螂が、嗚呼、そこ此処に―。



(はやく耳をふさいで。あれは死人の戯れ唄―。)



厭らしい声
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