早贄の宴/朽木 裕
 
い声で鵙が啼くんだ、林から。
冬が来る前に贄を―。



ねぇ、その生命の連鎖、
私も混ぜて貰えないだろうか。



―例えば私を殺す権利を鵙(きみ)に。




掴まれた肩には爪が食い込んでいく。
明かりのない部屋。

息を引き取る前の空。




螳螂はもう死んでいるから。

次に、死ぬのは私か鵙か。



…どちらにせよ、宴は開かれるのだ。

死の杯をかかげて。

だから約束をしよう、早贄の宴。




雪の降る頃、お前が死んだら必ずや、赤い椿を手向けよう。



私が冷たくなった時には、
どうか死人の戯れ唄を耳元で。


(はやく耳をふさいで。あれは死人の戯れ唄―。)


(…でも死んだら耳はふさげないもの。)
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