夏の未来/なまねこ
 
ようやく咲いた雲も
やけににぎやかな空に
こころもち
埋まってしまって
夏の面子からは
すっかり
雲の白さが
追い出されてしまっていた
蝉の羽音も
わめく声も
湿り気の中に
熱気を帯びて
空に
きつく
マーブリングされていた

バックパッカーは
夏から逃げるように
むぎわら帽は
夏に飛び込んでいくように
歪みそうにあつい
路面のアスファルトを
踏み台にして
遠くのまちへ
呼びかけていた

声が
響いている
粗い
麻紐のような
ささくれた熱気を伝って
遠くのまちへ
夏のない未来へ
腫れぼったい
ゆるく握った空の風を
届けている

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