夏の未来/なまねこ
雪のまちへ
冬のまちは
あこがれている
情熱をふくんだ
雪にかこまれて
夏を
夢見ている
バックパッカーは
春の背に
バイクを停め
むぎわら帽子は
秋風のなかで
ひんやりとした
帽子を脱いだ
誰もいない夏の街を
冬の街は
夢みている
つづいた空の
夏からつながる
グラデイションを
夜が来るまで
夢みている
麻紐をたどり
夏の未来のなかで
過去から届く
おだやかな夢を
夏のにおいを
枯れた麻の根に
吹きかけてやっている
にぎやかな
寒空の先で
ごわついた麻紐が
切れてしまわないように
バックパッカーが
すこし
身震いをして
むぎわら帽子は
むぎわらを
また
被りなおした
とおくの街は
広がっていく
麻紐は
空を編みこんで
夏の未来へ
伸びきったまま
溶け込んでいる
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