A!/水町綜助
 

僕はそこでガネーシャのレリーフの入った銀のスプーンをもてあそびながらぼんやりとしていた。
ドアが開いて音楽大学の生徒らしい女の子が入ってきた。
何の楽器か知らないが黒いそれらしいケースを抱えている。
店内はいっぱいだ。座れる所などない。
店主が女の子に近づいて耳打ちした。
「その辺りを二三周してきてくだされば」
言い終わるが早いか女の子の目の前、入り口近くの四人掛けの席に座っていた二人の男が言った。
「ドウゾドウゾここを今空けますよ」
きれいな笑顔。男たちは椅子ひとつ分奥にずれる。
女の子は戸惑っていた。
男は二人とも汗と脂で髪の毛を整髪していた。
きれいな笑顔。

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