コスモス/keiji
女は、突然向きを変え、僕の手を引いて駅横の路地
裏へ歩いていった。
誰もいなかった。
ただ、その先の土手にコスモスが咲いていた。
僕は黙って、彼女の眼を見た。
彼女は、思いつめたような瞳をしていた。
そして、眼ををとじた。
僕は、こんな幸せが、ずっと続くと思っていた。
今思うと、馬鹿らしいほど純粋だった。
ある日、いつものように駅に向かう川べりを
二人で歩いていた。
僕の肘には、彼女の胸が柔らかく触れた。
突然、彼女の顔が青くこわばるのを見た。
「どうしたの?」
僕は不安に
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