荒川洋治を読んでみる(一)『水駅』/角田寿星
 
連想したけれども、少し違う。

“荒川さん、この河の名は何ですか?”
この詩の世界に迷いこんだぼくは訊ねるでしょう。この河の名は、作者だけが知っている。ただ、以下にヒントのような文が連綿と続いて、ぼくはこの河がどのようなものであるか、類推することができます。
「だがこの水の移りは…即ぐにはそれを河とは呼ばぬものだと。」
「青野季吉は…水の駅を発った。その朝も彼は詩人ではなかった。」
からは、ことばという水が流れてポエジーという河になっているようだし、
「妻には告げて。」
からは、妻だけには河の名を明かしているということは、ある程度個人的な人生という河であることも考えられます。

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