荒川洋治を読んでみる(一)『水駅』/角田寿星
えておいて、この美しい一篇を読み進めていくと、ある違和感が湧き起こるはず。
この詩に横たわる世界は、みずみずしい温帯気候のそれを連想させます。「稚(わか)い大陸」というのも、地質学的には思いっきり間違ってる。たしかこの近辺は旧ローラシア大陸のもっとも古い部分で、地震なんかもほとんどないはずです。
荒川の奥さんが「しきりに河の名をきい」てるのも、むべなるかなです。作者夫婦が下っているこの河は、ドニエストルでもプルートでもないんだよね、きっと。彼らの視界に広がるこの豊かな「瑞の国」はモルドバではない。しめやかな温もりを保ちながらもけして湿度は高くない、初夏の風景です。ぼくはベトナムのメコン川を連想
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